Greeting

2017年10月より再開したClinica E.T. EAST.
リニューアルから5年になります。
私たちが診療を継続できていますのも一重に、治療に難渋するがんや慢性のなかなかとれない痛みを訴える患者さん、そのご家族やそれを支える皆様方の、深いご理解、温かいご支援の賜物と深く感謝しております。

再発したがん、いくつも転移したがんの血管内治療、なかなかとれないあちこちの痛み、リウマチ筋痛症や関節炎の治療を、皆様のご理解を得て日々進歩できていることをありがたく感謝し、なお一層、安全快適で有効な治療となるよう研鑽を続けてまいります。
この5年間にも、我々をとりまく世界に大きな変化がみられました。
その一つとしてがんゲノム診療が臨床の現場にも拡がりをみせました。リアルタイムに高い精度で、がん組織から血液に遊離したDNAを測定する、Guardant360遺伝子検査の有用性を検討し、2020年1月から進行したがんの診療の一助として導入しました。今まで163回の解析をおこない、83-84%の頻度で変異遺伝子あるいは増幅遺伝子を検出しています。そのうち、治療薬の選択に参考になった例はおおよそ60%であり、全体の約半数で治療上のインパクトが得られています。また、腹水や胸水にひろがったがんについては、中央区の中央病理診断クリニックと共同で、がん細胞を集めてセルブロックをつくり、これによるActmed遺伝子検査をおこなっています。このように血液や胸水、腹水をもちいたリアルタイムのがん遺伝子解析は、患者さんの直近のがんシグナル図について明らかにし、有効な治療のヒントを与えてくれます。
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化と画像の変化
(上行結腸癌、多発肺、肝、リンパ節転移)
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化
21/08/07
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化
血管内光動脈輸注治療による遺伝子検査図の変化
21/11/13
2002年から導入したナノ化薬剤による選択的な腫瘍血管低減治療は、2013年から取り組んだ免疫チェックポイント阻害剤の腫瘍血管への局所投与による、あらたな腫瘍血管低減治療へと発展し、これらは発明「微小ナノ化薬剤とその利用」として特許第6956091号に(2021年10月)、Microvascular Blood Flow Decreasing Agent and Use Therofとして米国特許11,382,953号に、Fine Nano-Sized Medical Agent and Use Thereofとして米国特許11,406,684号に(2022年7月、8月)登録されました。
2007/8年当時、横浜桐蔭大学医用生体工学部、川島徳道教授 (現環太平洋大学国際科学・教育研究所-所長)らとの共同研究で、天然色素Hypericinにより当方の微小ナノ化薬剤の腫瘍抑制効果が増強すること、589nm橙色光による光線力学作用によるがん細胞自滅誘導効果などが確認されました。2009〜2013年の4年間、Hypericinと微小ナノ化薬剤を併用した500件をこえる進行がんの血管内治療にて、安全性、有用性を確認しました。これらの背景のもと、2020年12 月24日から、天然色素Hypericinや少量の色素性化学療法剤を局所の腫瘍血管内へ投与したのち、対応する波長の光による光線力学治療を開発し、腫瘍血管を低減し、がん細胞を自滅させる治療を組み立てています。
光線力学作用によるがん細胞自滅誘導効果
光線力学作用によるがん細胞自滅誘導効果
光線力学作用によるがん細胞自滅誘導効果
2019年12月に中華人民共和国湖北省武漢でみられたCOVID19 ウィルス感染症は、瞬く間に全世界に広がり、変異をくりかえして蔓延しました。症状がでて重症化したり死亡する例は少ないものの、潜伏期が比較的長く無症状のなか感染源となるため、緊急事態宣言により、移動や社会活動の自粛で受診を控えたり、休業の要請など、心理的に、また社会経済に極めて大きい負の抑圧がかかる世界に様変わりしました。当初は、当院のように進行したがんの患者さんや、痛みの患者さんには直接的な影響は少ないと考えていましたが、それは全く間違いであり、遠方での診療が困難になり受診できず、継続した治療が困難になったり、また入院をするとご家族も面会できず、精神的負担が大きく病状が悪化したりするなど、その影響は極めて大きいものであることがわかりました。感染力の極めて強いデルタ株、さらにオミクロン株に変異し蔓延したため、免疫ができようやく陽性者数が激減し、少しづつ社会活動の再開がすすむと思われたさなか、再び陽性者数が激増して、またも行動制限が繰り返されている状況です。このような中、進行したがん患者さんの治療については、ますます副作用を少なく、効果を高め、身体負担をかけない外来ベースの治療の強化を考えていくことが重要となってきています。また、2021年からCOVID19vaccine接種が行われましたが、コントロールされていた転移がんの患者さんで、複数回のVaccine接種直後にバイオマーカーの増加や新たな病巣の出現が多くみられています。これらの継続治療を進める上で、今後注意すべき課題と捉えて観察を続けています。

ご挨拶

Renewalのご挨拶

1995年埼玉県、熊谷市、奥野神経放射線クリニックで産声をあげた血管内治療。
2000年11月から横浜市で始まったClinica.E.T. EAST
20年の月日が経ちました。
進行したがん。いくつもある転移。リウマチ。なかなか取れない痛み。
「もう治療はないのか?」「あきらめるしか道はないのか?」
がんやリウマチに悩む患者さんから、そんな切実な声をどれほど沢山聞いてきたことか。
その声に応えるべく、ナノ化した薬剤の開発や病的に増えた血管密度を減らす薬剤の開発を続け、効果的で副作用の少ないユニークな治療が出来てきたのです。

Clinica E.T. EASTの血管内治療と
ほかの癌治療はどこが違うのか?

それはがんの起源を幹細胞ととらえ、がん細胞そのものを狙わずに、がんの周り(がんniche)を変えていくところにあります。
がんの塊となった組織の半分はがん細胞、でも残りの半分は血管内皮細胞、炎症細胞、
線維芽細胞などの間質と呼ばれる組織です。
どちらが増えてもがんは大きくなりますし、どちらが減っても癌は小さくなります。
驚く事に、このがんniche(がんの環境)を変えることを狙った治療は皆無といっても過言ではありません。

一方、塊となったがん細胞。その一つ一つは顔が違います。クローンと異なりそれぞれ個性をもって増えています。(がんのheterogeneity)

がん細胞はどこから来たのか?

その始まりは1個から。不均等に分化しながら増えてきたと考えられます。
最初の1個はもちろん生きている。.....がん幹細胞。

人間の身体をつくる65兆個の細胞。
その始まりは1個の受精卵。
分化しながらいろんな顔の細胞をつくってきました。
がんは、この身体をつくった細胞(幹細胞)から出来てきた。
つまり、分化して成熟できなかった幹細胞に近い細胞ががんの始まりと考えられます。

がんの起源は幹細胞。
だからSelf-renewalが出来る。しかもendlessに!
抗がん剤も、分子標的薬も、放射線も。
効かないような強い細胞に変身できる。(耐性)
最初は薬が1年効いた。効かなくなって変えた薬(2nd line)は半年効かず。

その次は(3rd line)もっと早く再燃します。
65兆の細胞を支えるエネルギーは消化管から。その栄養を取り込むために650兆の腸内細菌が働いています。細胞毒の影響はこれらの細胞に最も強く現れます。
嗜好がかわり、味覚がかわり、食事が楽しく感じられなくなっていきます。

がん細胞とからだをつくる幹細胞
似た者同士なのにどうしてそんなに違うのか?
そう、環境がちがうのです。

がん細胞の周りに異常に増えたがんの血管(腫瘍血管)。
Notch 1やDDL4などの蛋白が働かないと枝分かれする血管内皮細胞だけが増えて
血管は増えても血液は渋滞。中心部は常に低酸素状態になっています。
この低酸素こそがん幹細胞の活性化の源。活性化したがん細胞は分化分裂を繰り返し、周りの血管をさらに増やすとともに、リンパ球も集まってきます。
異常に増えたリンパ球。
その多くは表面にPD1, CTL4などのタンパク質を付けてがん細胞を呼び寄せます。
がん細胞はこの疲れたリンパ球に結合し、隠れ蓑にして免疫を逃れます。

Clinica E.T. EASTの血管内治療はここが違う。

がん細胞そのもをを狙わずに(抗がん剤は使わずに)、腫瘍血管を減量し、
がん組織の低酸素を改善します。
リンパ球抗体(抗PD1 ニボルマブ 薬品名オプジーボ ,CTL4抗体 イピリムマブ 薬品名エルボイ)やPDL1抗体(ペンブロリズマブ 薬品名キートルーダ)、抗炎症剤をもちいて異常に増えたリンパ球を減量し、免疫が働きやすくなります。
その結果、がんの幹細胞がおとなしくなりあらたな細胞をつくらないようになります。
ある患者さんが、おっしゃいました。
「生活は普段通り、治療はしっかり。それが血管内治療ですね」
治療自体に副作用や苦痛が伴い、しかもそれが長く続くと、「なんのために治療しているのだろう」と気持ちがなえてしまいます。
私が目指すのは、希望をもつための治療です。血管内治療が患者さんの最後の望みではなく、治療を求める人すべてに届くように、これからもさらなる研究を進めていきます。